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松井・吉村両氏が投票結果を「重く受け止める」「再挑戦しない」と言明した理由 (藤井聡)

「公明賛成」にも関わらず「二回連続・否決」された重大な意味

3)「吉村人気」があるにも関わらず得られた否決の意味は大きい

 しかも、維新の象徴が「橋下氏」から「吉村氏」に変わった事も、賛成派にとってむしろ有利な条件となり得るものでした。

 橋下氏にはカリスマ的人気は確かにありましたが、その強烈な個性故に大阪市民の間に強烈な反発があったことも事実です。

 事実、橋下氏は、2015年の住民投票の敗因について

 「僕が嫌われていたから」

https://dot.asahi.com/wa/2019013000031.html

と言及されていますが、その側面は確かに否定しがたいものです。

 ところが、吉村氏は橋下氏ほどの強烈なカリスマ性や個性はありませんが、その代わりに幅広く市民から高い好感度を持って支持される方でもありました。

 したがって、「反対派」からしてみれば、吉村人気は大変な脅威だったわけです。

 「イソジン会見」によって、吉村人気に陰りが見られたとは言え、全国区に通用する吉村人気は、大阪市内では未だに絶大なものであったことに代わりがありません。

 それにも関わらず「反対多数」となった背景には、

 「吉村さんの維新は支持するけど、大阪市廃止には反対」

という有権者が多かったことが重大な理由となっています。

 維新の政策を評価する人の実に三分の一もが、都構想に「反対」を表明したのです。

https://twitter.com/tkn0407inym/status/1322929048373194753/photo/1

 つまり今回、吉村さんや維新の好き嫌いとは「別」に、大阪市を廃止することの是非を考えた有権者が実に多かった事を意味しています。

 この事実も又、「大阪市民の真の民意」が、「大阪市存続」であることの強烈な証左の一つと言うことができるでしょう。

4)「当初、14%も賛成派が多かった」にも関わらず得られた否決の意味は大きい

 最後に、本年6月時点では、賛成派の方が反対派よりも圧倒的に多かった、という事実を挙げることができます。

 たとえばこちらの世論調査では、令和26月時点、住民投票の四ヶ月前の時点で賛成49%に対して反対はわずか35%しかなかった事が示されています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60945630Z20C20A6AC8000/

 こうした世論調査が世間的にも共有されていましたし、上述の「吉村人気」があったことも手伝って、当方いろいろなところで、

 「藤井さん、今度の都構想はもう可決されるのはしょうがないですね」

という声を何度も耳にしました。所謂「反対派」と言われる方々の方々からも、

「藤井さん、今度の住民投票は、かなり絶望的な状況ですが…」

という声も何度も耳にしました。

 当方は、そういう声をする度に、

 「いやいや、まぁ、そうかもしれませんが、まだ大阪市民の方にしっかり、大阪市廃止の内容についての客観情報が伝わってないから、そんな雰囲気になってるだけだと思いますよ。まぁ、厳しい状況ですが、住民投票が近づいて、有権者の皆さんがより真剣に客観的情報に触れようとし出せば、ひょっとすると状況が変わるかもしれませんよ」

という風にお答えしていました。

 とはいえ、この「ひょっとすると」という言葉からも明らかな通り、当方も、今回ばかりは可決する可能性の方が圧倒的に高いだろう…と6月頃の時点で認識していたのは事実です。

次のページ戦後日本人がほとんど経験したことのない、壮大な政治的議論に大阪市民が決断

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藤井 聡

ふじい さとし

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。京都大学工学部卒、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学助教授、教授等を経て、2009年より現職。また、11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長、12年より18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。専門は公共政策論。著書に『経済レジリエンス宣言』(日本評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』『「10%消費税」が日本経済を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』(共に晶文社)、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』『国土学』(共に北樹出版)、『令和日本・再生計画』(小学館新書)、MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実(晶文社)など多数。

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  • 藤井 聡
  • 2020.10.12